- マーレン・ロイサーは1991年生まれのスイスの選手。外科の助手医として働いたのち、世界選手権の個人タイムトライアル(ITT)を2025年・2026年に連覇しました。
- 2026年9月のモントリオール大会(39.2km)を50分24秒で制し、35歳の誕生日に2連覇を決めました。
- 医学生の見立て:強さを「医師だったから」と決めつけるのは早計です。公表されているデータが少ないので、事実と筆者の推論を分けて読んでいきます。
「マーレン・ロイサー」と聞いて、日本ではまだピンと来ない人も多いと思います。でも、この人の経歴は本当に変わっています。医学を学び、病院で働きながら競技を始め、気づけば世界王者です。基礎医学と臨床実習に追われる医学生の私からすると、同じ24時間で何が起きているのか、正直ちょっと想像がつきません。この記事では、プロフィールから2026年世界選手権の中身、経歴、そして医学生としての見方まで、順番にまとめます。
マーレン・ロイサーとは?プロフィールと主な実績
| 生年月日 | 1991年9月20日(2026年9月20日で35歳) |
|---|---|
| 出身 | スイス・ベルン州エメンタール(農家で育った) |
| 身長 | 180cm |
| 所属 | モビスター・チーム(2025年〜) |
| 主な実績 | 世界選手権ITT優勝(2025年・2026年)/東京五輪(2020大会)ITT銀メダル/ツール・ド・スイス総合優勝(複数回) |
| 前職 | 外科の助手医(医学部卒業後) |
※ 2026年10月14日時点で、公開されている情報をもとにまとめています。ここまでの数字は主にWikipediaと大会報道に基づくため、正確な成績は公式情報もあわせてご確認ください。
2026年世界選手権ITT:50分24秒で連覇、レースの中身
2026年9月20日、カナダ・モントリオールの市街地コース(全長39.2km)で行われた女子エリートITT。ロイサーは50分24秒で優勝しました。2025年のキガリ(ルワンダ)に続く連覇で、しかもこの日は自身の35歳の誕生日でした。
| 順位 | 選手 | タイム差 |
|---|---|---|
| 1位 | マーレン・ロイサー(スイス) | 50分24秒 |
| 2位 | ゾーイ・ベックステッド(イギリス) | 約40秒差 |
| 3位 | フランツィスカ・コッホ(ドイツ) | 約45秒差 |
※ 2位・3位の差は、報道によって1秒ほど表記が異なります。
後半に追い上げた、レース展開
- スタート出走順は最後。つまり、他の選手のタイムが全部わかった状態で走り出す立場でした。
- 最初の計時この時点では5番手。トップのベックステッドとは約10秒差でした。
- 中間計時差を約3秒まで縮め、その後フェリシティ・ヴォレリングを追い抜きました。
- 終盤約600mの登りでベックステッドがタイムを落とし、ロイサーがそのまま押し切りました。
報道によると、ロイサーは途中計時の情報をあえて求めず、落ち着いて自分のペースで走ったとされています。
医師から世界王者へ:経歴タイムライン
ここがロイサーの一番面白いところです。報道や本人のインタビューから確認できる範囲でまとめます。
- 2017年ごろ医学の学位課程の最終学年。競技ライセンスを取得し、数か月でスイス国内選手権に出場。ITTで優勝、ロードレースで2位。
- 2018年世界選手権に向けた準備期。ランゲナウ病院で非常勤の医師として働いていた。
- 2019年WCCチームの拠点に入り、競技に専念する決断。
- 2020大会東京五輪の個人ITTで銀メダル。
- 2025年モビスター・チームに加入。キガリで世界選手権ITT初優勝。
- 2026年モントリオールでITT連覇。
本人はインタビューで、自転車選手でなかったら病院で医師として働いていると答えています。研修と練習を両立するのは大変だった、とも話しています。
【医学生の視点】「遅咲きだから有利」は本当か
ロイサーの話になると、よく「遅く始めたから、若いころの消耗がなくて有利だった」という語られ方をします。私はこの説明に、少し引っかかっています。
- 持久力の土台は、若いうちから積み上げるほど有利だと考えられる。
心肺機能や筋の毛細血管の発達といった適応は、若い時期の積み重ねが大きいとされています。ただし個人差が大きく、「何歳から始めれば何が決まる」とは言えません。 - それでも2017年開始で世界王者になった事実は、素質の大きさを示している。
25歳前後から競技を始めてここまで来たのは、並外れた素質があったのだろう、というのが私の見方です。ただし遺伝子や生理学的なデータは公表されておらず、これは推論にすぎません。 - 転機は「専業化」だったのかもしれない。
2019年にチームの拠点に入り、競技に集中する環境が整いました。環境・コーチ・回復の質が一気に上がったことが、素質を開花させた可能性があります。
「医学の知識を練習に活かして近道をした」という話は、よく見かけます。でも私が確認できた範囲では、ロイサー本人が「医学知識が練習に役立った」と語っている発言は見つかりませんでした。FTPやVO2maxなどの具体的な数値も公表されていません。ここはファンの想像にとどまる部分だと考えています。
VO2maxとは何か、トップ選手の心肺機能がどうすごいのかは、ポガチャルのVO2maxを解説した記事で詳しく書いています。
ITTのペーシングを医学生が読む:50分間、出力を保つということ
ITTは、スタートから決められた距離を一人で走ってタイムを競う種目です。ロイサーの約50分という時間は、一般に「閾値(しきいち)」付近と呼ばれる強度で保てるぎりぎりの長さに近い、と私は考えています。
この強度域で序盤に入りすぎると、筋に水素イオンなどが蓄積し、終盤にペースを維持できなくなりやすいとされます。逆に言えば、序盤で抑え、後半に上げていくレースは理にかなっています。今回のロイサーも、最初の計時では5番手でしたが、最終的に逆転しました。これが意図したペーシングだったのかは本人にしかわかりませんが、結果としては「後半に強い走り」だったと言えます。
とはいえ、アマチュアが心拍計の数字だけを見て走ると、体の感覚を失いがちです。サイクリングでのペース配分の考え方は、「RPE(主観的運動強度)」を解説した記事で詳しく書きました。TTバイクについて気になる人は、コルナゴのTTバイクを解剖した記事もどうぞ。
ロードバイクの良いところは、プロと同じ種類の機材を、わりと手の届く価格で使えることです。そして日常で一番コスパよく走りが変わりやすいのが、実はタイヤです。普段使いもできる定番の高性能タイヤを、参考までに置いておきます。
マーレン・ロイサーに関するよくある質問
マーレン・ロイサーは何歳ですか?
1991年9月20日生まれで、2026年9月20日に35歳になりました。この日はちょうど、世界選手権ITTで連覇を決めた日です。
身長はどれくらいですか?
公開されているプロフィールでは180cmです。
本当に医師だったのですか?
医学部を卒業し、外科の助手医として働いていたと報じられています。2018年ごろには、ランゲナウ病院で非常勤の医師として勤務していたとされます。
世界選手権では何回優勝していますか?
個人タイムトライアルで2025年(キガリ)と2026年(モントリオール)の2回優勝しています。
FTPやVO2maxは公開されていますか?
私が確認できた範囲では、公式な数値は公開されていません。ネット上の数字は出典のないものも多いので、この記事では扱っていません。
まとめ:医学生から見た、ロイサーという存在
外科の助手医から世界王者へ。マーレン・ロイサーは、2025年と2026年の世界選手権ITTを連覇した、稀有な経歴の選手です。強さの理由は、素質、専業化、環境など複数の要素が重なった結果だと思います。確かなデータが少ないので断定はできませんが、だからこそ、公表されている事実から想像するのが面白いのかもしれません。
女子ロードの強さに興味が出てきた方は、ウルシュカ・ジガートの登坂力を解説した記事もどうぞ。同じモントリオール世界選手権を扱ったマクナルティの記事もあります。
