ポガチャルの身長・体重・FTPは? 数字で読む「世界最強のエンジン」を医学生が解説

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2026年のツール・ド・フランスで5勝目を挙げ、歴代最多タイに並んだタデイ・ポガチャル。テレビで見ていると、トゥールマレーもラルプ・デュエズも「普通に登っているだけ」に見えてしまうのが、正直いちばん怖いところです。

では、あの走りを数字にするとどうなるのか。ポガチャルの身長・体重、そしてFTP(1時間出し続けられるパワー)はいくつなのか。公式プロフィールと、各国メディアや研究者が公開している推定値を集め、医学生の目線で「その数字が体の中で何を意味しているのか」まで読み解いてみました。

結論:ポガチャルを数字で見ると

  • 身長・体重176cm・66kg(チーム公式プロフィール)
  • レース時の体重約64.5kg。オフシーズンは約69kgまで戻ると報じられている
  • FTP推定約415W(体重あたり約6.3〜6.4W/kg)
  • 登りのパワー40分前後の登坂で約6.4〜7.0W/kg、平均440W前後と推定

※ポガチャル本人はパワーデータを公開していません。FTPや登坂パワーは、ライド記録やタイムから第三者が計算した推定値です。

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ポガチャルの身長・体重は? 公式プロフィールを医学的に見る

まずは基本のプロフィールから。所属するUAEチーム・エミレーツXRGの公式サイトでは、次のように公表されています。

項目数値医学生メモ
生年月日1998年9月21日(28歳)持久系の能力がピークを迎えやすい年代
身長176cm日本人男性の平均より少し高い程度
体重66kg公式値。レース時はもう少し軽い(後述)
BMI約21.3普通体重の範囲(18.5〜25)のど真ん中
体表面積約1.81m²Du Bois式による計算値

意外に思った方も多いのではないでしょうか。BMIだけを見れば、ポガチャルは「健康診断で何も言われない、ごく普通の体格」です。クライマーというと極端に細い体を想像しがちですが、彼はTTもスプリントもこなすオールラウンダー。登りだけに特化した体ではなく、筋肉量をある程度残したまま軽さとのバランスを取っている、と読むのが自然です。

医学の視点:BMIでは「中身」はわからない

BMIは体重を身長の2乗で割っただけの指標なので、筋肉と脂肪を区別できません。同じBMI21でも、体脂肪率が10%の人と20%の人では、体の中身はまったく別物です。ポガチャルの体脂肪率は公表されておらず、ネット上で見かける数字の多くは出典がはっきりしません。この記事でも、体脂肪率の数字は扱わないことにしました。

「股下」や手足の長さは公表されていない

検索すると「ポガチャル 股下」もよく調べられているのですが、股下の実測値は公式には出ていません。ただ、体格と機材の関係で言えば、身長176cmで165mmという短いクランクを選んでいる点のほうがずっと面白い。脚の長さより「股関節をどれだけ畳めるか」が彼のポジションを決めているからです。

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ポガチャルの体重はシーズンで約4.5kg変わる

公式の66kgは、あくまで「ふだんの体重」。英BikeRadarは、2024年ツール開幕時のレース体重を約64.5kg、オフシーズンには約69kgまで戻ると伝えています。つまり1年の中で4.5kgほど上下しているわけです。

たった4.5kgと思うかもしれませんが、これは体重の約7%。仮にFTPが415Wで変わらないとすると、体重あたりのパワーは次のように動きます。

6.4W/kgレース体重 64.5kg
6.3W/kg公式体重 66kg
6.0W/kgオフ体重 69kg

ここで私が強調したいのは、世界最強の選手ですら、一年中レース体重でいるわけではないということです。体重を落とした状態は、いわば「本番用の特別仕様」。オフにしっかり食べて体を戻すのは、怠けているのではなく、体を守るための計画的な選択だと考えられます。

医学の視点:「軽さ」を一年中追うと何が起こるか

トレーニング量に対して食事が足りない状態が続くと、体はエネルギーを節約するモードに入ります。スポーツ医学ではこれをRED-S(スポーツにおける相対的エネルギー不足)と呼び、ホルモンバランスの乱れや骨密度の低下、疲労骨折、免疫力の低下などにつながることが知られています。どの程度で問題が起きるかには個人差が大きく、体重計の数字だけでは判断できないのが難しいところです。

10代で一気にトップへ駆け上がったポール・セクサスについて書いた記事では、このRED-Sと骨密度のリスクを詳しく掘り下げています。「若くて軽い」ことの危うさが気になる方はぜひ。

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ポガチャルのFTPは推定約415W。どうやって計算された?

いちばん検索されている「ポガチャルのFTP」。よく引用されるのが約415Wという数字です。

この数字の出どころは、2024年の世界選手権前にポガチャルがStravaへアップした練習記録です。モナコ周辺を約240km、6時間20分ほど走ったライドで、ノーマライズドパワー(強弱を考慮した平均出力)が326W、トレーニングストレススコア(TSS)が390と表示されていました。英Cycling Weeklyによれば、この2つの値からスポーツ科学に詳しい人物が逆算したのが415Wです。体重65kgで割ると約6.4W/kgになります。

この415Wは「測った値」ではない

TSSは「どれだけの強度で何時間走ったか」をFTP基準で点数化したものです。逆に言えば、TSSと時間とノーマライズドパワーがわかればFTPを逆算できます。ただし、ここで使われたFTPはポガチャルのサイコンに設定されていた値であって、ラボで測定した数字ではありません。設定が古ければ実力とはずれますし、本人やチームが認めた数字でもない。あくまで「かなり確からしい推定」として受け取ってください。

もうひとつ衝撃的なのが、同じくBikeRadarが紹介している「ゾーン2で約340Wを5時間」という練習の数字。一般のホビーライダーなら、340Wは数分もつかどうかの全力域です。それを会話できる強度で5時間。このあたりの「土台の厚さ」については、ゾーン2の記事で生理学的に深掘りしています。

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登りのパワーは40分で約440W。名峰ごとの推定値

FTPより実感しやすいのが、実際のレースでの登坂パワーです。ツールの山岳ステージは中継映像とStravaのタイムがあるため、勾配・体重・空気抵抗などを仮定すればパワーを推定できます。主な推定値をまとめました。

レース・登り時間推定パワー出典
2024ツール 第15ステージ
プラトー・ド・ベイユ
約40分約6.98W/kgBikeRadar
2025ツール 第13ステージ
ペイラギュード個人TT
23分00秒約464W(約7.1W/kg)Pro Cycling Coaching
2024・2025ツールの主要6峰
(研究による推定)
約40分平均約442W(6.4〜7.0W/kg)Berg(Journal of Science and Cycling)
2026ツール 第6ステージ
トゥールマレー峠
43分08秒約6.4W/kg、最後の約15分は約7.2W/kgDomestique / IDLProCycling
2026ツール
ラルプ・デュエズ
35分27秒約6.99W/kgCyclingUpToDate(Naichaca氏の推定)

※いずれも第三者による推定値で、風・ドラフティング・体重の仮定によって数%単位で変わります。

2026年のトゥールマレーでは、2023年にロマン・バルデが記録したタイムを約4分も縮め、ラルプ・デュエズではパンターニの伝説的な記録を上回ったと報じられました。40分前後の登りを、6.5〜7W/kgで押し切る。これが今のポガチャルの「標準」だと言えそうです。

物理の視点:なぜ登りは「W/kg」で決まるのか

時速20km台の登りでは、空気抵抗より「体と自転車を持ち上げる仕事」が圧倒的に大きくなります。必要なパワーはほぼ体重に比例するので、体重あたりのパワー(W/kg)がそのまま速さになります。一方、平地では空気抵抗が主役になり、体重よりも絶対的なワット数と前面投影面積が効いてきます。ポガチャルが平地のTTでも強いのは、W/kgだけでなく絶対値も大きいからです。

「軽量化とエアロ、結局どっちが効くの?」という疑問については、富士ヒルを題材にした記事で計算しています。

関連記事 富士ヒル選ぶならどっち? 10gの軽量化 vs 1Wのエアロ向上

そのパワーを生む「心臓と肺」:VO2maxの推定値

パワーを出すには、筋肉に酸素を送り続けなければいけません。先ほどの表にも登場したノルウェー・モルデ大学のBerg氏の研究では、40分の登りの間のポガチャルの酸素摂取量を平均で約80mL/kg/分、ピークで約90mL/kg/分と推定しています。

一般的な成人男性の最大酸素摂取量(VO2max)は35〜45mL/kg/分程度と言われるので、ざっくり2倍。しかも「最大値」ではなく、40分間の平均でこの数字です。安静時の心拍数が睡眠中に37拍/分という報道もあり、1回の拍動で送り出す血液量(1回拍出量)が非常に大きい、典型的なアスリート心臓だと考えられます。

VO2maxや心臓の話はこのブログの十八番なので、ここでは深入りしません。仕組みから知りたい方は下の記事へどうぞ。

詳しく解説 ポガチャルのVO2maxはなぜ異次元なのか? 医学生が解き明かす「最強の心臓」とミトコンドリア

あなたのW/kgはポガチャルの何%? 富士ヒル換算で比べてみる

数字が大きすぎて実感がわかないので、日本のホビーライダーにおなじみのMt.富士ヒルクライム(25km・標高差1,270m・平均勾配5.2%)に置き換えてみます。体重65kg・バイク8kgの人が、一定のパワーで一人で登り切った場合の目安を計算しました。

W/kg富士ヒルの目安タイムイメージ
2.5約1時間49分ロードバイクに慣れてきた頃
3.0約1時間33分ブロンズ(90分切り)が見えてくる
3.5約1時間22分シルバー(75分切り)を狙う段階
4.0約1時間13分シルバー圏
4.6約1時間05分ゴールド(65分切り)ライン
6.3〜6.9約49〜51分ポガチャル(推定FTP〜40分パワー)

※空気抵抗係数(CdA)0.32m²、転がり抵抗0.004、空気密度1.0kg/m³(標高を考慮)、駆動ロス2.5%、無風・単独走行と仮定した物理モデルによる計算です。実際のレースでは集団走行の恩恵があるため、必要なW/kgはこれより少し低くなります。

ポガチャルが本気で富士ヒルを登れば、計算上は50分前後。ゴールドを狙う上級者より15分も速い計算です。ちなみにゴールドに必要な4.6W/kgでさえ、ポガチャルの推定FTPの7割ほど。この差が「プロとアマ」ではなく「プロの中でも別格」の差だというのが、改めて恐ろしいところです。

W/kg計算機:ポガチャルと比べてみよう

–あなたのW/kg
–ポガチャル比(推定FTP 6.3W/kg)
–富士ヒル目安(FTPで単独走)

※上の表と同じ物理モデルで計算しています。あくまで目安として楽しんでください。

W/kgを出すには正確な体重とFTPの2つが必要です。体重は朝起きてトイレの後に測るなど、条件をそろえるのがコツ。1日の中でも1kg前後は平気で変わるので、1回の測定で一喜一憂しないことも大切です。私は体組成計で毎朝測って、週の平均で見るようにしています。

FTPのほうは、パワーメーターで20分テストをするのが一般的です。測り方やアプリの使い方は、初心者向けにまとめた記事があります。

関連記事 【初心者向け】パワーメーターの使い方完全ガイド|FTPの目安とおすすめアプリ

ポガチャルの数字から、私たちが学べる3つのこと

1. W/kgは「体重を減らす」より「パワーを上げる」で伸ばす

W/kgは割り算なので、分母(体重)を減らしても上がります。ただ、エネルギー不足のまま体重だけ落とすと、筋肉も一緒に減ってパワーが下がり、結局W/kgは伸びない、というのはよくある失敗です。ポガチャルですら公式体重はBMI21台。まずは分子(FTP)を上げる練習を軸にするほうが、体にも記録にもやさしい方法です。

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2. 体重は季節で変えていい

オフに約69kgまで戻すポガチャルを見習って、私たちも「一年中ベスト体重」を目指す必要はありません。目標レースの1〜2か月前に少しずつ絞り、終わったらちゃんと食べて戻す。減量するなら、走ったのに痩せない理由を理解しておくと遠回りしなくて済みます。

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3. 本当にすごいのは「疲れてから出せるパワー」

プラトー・ド・ベイユのステージは約200km・獲得標高5,000m近く。ポガチャルが約7W/kgで登ったのは、4時間以上走ったあとの最後の登りでした。コーチのマヌエル・ソラ・アルホナ氏の分析では、同じステージを走った別の選手のデータから、ラストの登りに入る前の時点ですでに体重1kgあたり60kJを超える仕事をしていたと見積もっています。

最近のスポーツ科学では、この「長時間走ったあとにどれだけパワーを維持できるか」をデュラビリティ(耐久性)と呼び、FTPやVO2maxと並ぶ重要な指標として注目しています。フレッシュな状態の20分テストでは見えない能力です。セクサスの2026年を振り返った記事で書いた「バッドデーでも遅れない力」も、まさにこの話につながっています。

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まとめ:ポガチャルの強さは「普通の体格」と「異常なエンジン」の組み合わせ

ポガチャルの身長は176cm、体重は公式66kg(レース時は約64.5kg)。体格だけを見れば、健康診断で何も言われない普通の青年です。それなのに、FTPは推定約415W、40分の登りでは約440W・7W/kg前後を叩き出す。この「体は普通、エンジンは異常」というギャップこそが、彼の本当のすごさなんだと思います。

そしてもうひとつ。世界最強の選手でさえ、オフには体重を戻し、一年中を「本番仕様」で過ごしてはいないこと。数字を追いかけるときほど、この事実を思い出したいところです。

よくある質問

ポガチャルの身長と体重は?

チーム公式プロフィールでは身長176cm、体重66kgです。レース時は約64.5kg、オフシーズンは約69kgと報じられています。

ポガチャルのFTPはいくつ?

2024年のStrava記録から逆算された推定値は約415Wで、体重あたり約6.3〜6.4W/kgです。本人やチームが公表した数字ではありません。

ポガチャルの最大パワー(最大ワット数)は?

スプリントなどの最大値は公表されていません。2025年ツールのペイラギュード個人TTでは、ゴール付近で540Wを超えたという推定があります。

ポガチャルのW/kgはどれくらい?

FTPベースで約6.3〜6.4W/kg、40分前後の登りでは約6.4〜7.0W/kgと推定されています。2026年ツールのラルプ・デュエズでは約7W/kgと見積もられました。

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